直積集合についての見直し

僕は今まで、直積集合についてしっかりと理解をしているつもりでいた。
でも、位相空間論を勉強しているうちに、直積集合の理解があやふやでいたことがわかった。
最近、改めて見直したのでこの記事に自分の理解を書き記すことにする。

順序対

$(x_1,x_2)$
のような形をしている要素を順序対と言う。
2次元座標を考えるとわかりやすい。座標の点は、
$(x,y)$
の様に表されるが、これは順序対である。
$x,y$ が違う値であれば、
$(x,y)\neq(y,x)$
である。これも、座標を考えるとすぐにわかる。
つまり、
$(x_1,x_2)=(y_1,y_2) \Leftrightarrow x_1=y_1 \land x_2=y_2$

この順序対の説明は厳密でないが、今回の話題においては基本が理解できていれば良いので、この程度に止めておく

集合族

$\Lambda$ を集合として、任意の $\lambda \in \Lambda$ に対応する集合 $X_{\lambda}$ があるとき、その対応を集合族と呼ぶ。これは、次のように書かれる。
$(X_{\lambda})_{\lambda \in \Lambda}$

対象の集合が無限個ある時にでも、これを用いてうまく表すことが出来る。
例えば、無限個の集合の和集合は集合族を用いて次のように表される。
$\bigcup_{\lambda \in \Lambda} X_{\lambda}$

直積

直積集合とは、複数の集合の要素で順序対を作る演算である。次のように書かれる。
$A \times B=\{(a,b) \mid a \in A, b \in B\}$
要素が順序対であるので、一般的には、
$A \times B \neq B \times A$
となる。
また、直積集合を次のような記号を使って表す。
$\prod_{i=1}^n X_i = X_1 \times X_2 \times \cdots \times X_n$
我々が普段使っている2次元の直交座標は、2つの実数の順序対の集合であるから次のように表される。
$\mathbb{R} \times \mathbb{R}$
$\mathbb{R}$ は、実数全体の集合である。

また、直積集合は写像の集合として定義される。（僕の理解があやふやだったのはここから）
$Map(A,B)$ 、 $A,B$ は集合
を、AからBへの写像の全体とすると、直積集合は次のように定義される。
$\prod_{\lambda \in \Lambda} X_{\lambda} = \left\{ x \in Map \left(\Lambda,\bigcup_{\lambda \in \Lambda} X_{\lambda} \right) \middle| \forall\lambda \in \Lambda, x_{\lambda} \in X_{\lambda} \right\}$
ここでの、 $x_{\lambda}$ は、 $x(\lambda)$ の事である。 $x$ は写像だから、 $x(\lambda)$ は、写像 $x$ による $\lambda$ の対応先である。
この集合は、 $\Lambda$ から $\bigcup_{\lambda \in \Lambda} X_{\lambda}$ への写像全体なので、本当は $\lambda_{i} \in \Lambda$ が、 $X_{\lambda_{i}}$ の元へ対応して欲しい（というか対応しないと、直積として成り立たない）ところを、他の $X_{\lambda_{j}}$ の元へ対応してしまう可能性がある。
だから、 $\forall\lambda \in \Lambda, x_{\lambda} \in X_{\lambda}$ という条件をつけている。

※2024/02/07 追記
あたかも順序対による定義と写像による定義が対立するもののように書いてしまっていますが、順序対も写像による構築ができます。
写像 $\displaystyle x(\lambda) \rightarrow a_\lambda \in A_\lambda, \lambda \in \Lambda$ は、 $\lambda$ 番目の集合から $A_\lambda$ の要素を取ってくる写像なので、
$(\displaystyle x(\lambda_1), \displaystyle x(\lambda_2),...), \displaystyle x(\lambda_1) \in A_1, \displaystyle x(\lambda_2) \in A_2,...$ のようにすれば順序対になります。

対象とする集合の中に空集合があると、その集合に対して元を対応させることができなくなるので、直積は空集合になる。つまり、
$\exists \lambda \in \Lambda \; s.t.\; X_{\lambda} = \emptyset \Rightarrow \prod_{\lambda \in \Lambda} X_{\lambda} = \emptyset$

射影

射影という概念があって、これは次のような写像である。
$p_{\lambda_i (\in \Lambda)}: \prod_{\lambda \in \Lambda} X \rightarrow X_{\lambda_i}$

例えば2次元座標における射影は次のようになる。
$p_{1}: \mathbb{R}\times\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R},\; p_{1}\left((x_1,x_2)\right) = x_1$
まあ、要はある順序対のi番目の要素を見に行く操作と考えるとわかりやすい。

写像だから逆像が定義できるわけで、これは例えば次のようになる。
$p_{\lambda_i(\in \Lambda)}^{-1}\left(A_{\lambda_i} \left(\subset X_{\lambda_i}\right)\right) = X_{\lambda_1} \times \cdots \times A_{\lambda_i} \times \cdots$

一般に、射影は全射であるが単射でない。ある $x_{i} \in X_{i}$ を含んだ順序対は複数作れるからね。
もし、任意の $\lambda_{i} \in \Lambda(\lambda_{i} \neq k)$ について、 $|X_{\lambda_{i}}| = 1$ なら、 $p_{k}$ は全単射になるね。